遺産分割の調停や審判の申立てがなされた場合,相続財産に属する債務の弁済,相続人の生活費の支弁その他の事情により,遺産に属する預貯金債権を行使する必要があり,他の共同相続人の利益を害しないときには,家庭裁判所が遺産に属する特定の預貯金債権の全部又は一部を相続人に仮に取得させる仮処分を行うことができるようになり,2019年7月1日より施行されています。
これを遺産分割前の預貯金債権の仮分割の仮処分といいます。
これは,家庭裁判所の判断を要するものですが,家庭裁判所を介さなくても,簡易に預貯金の払い戻しを実現させるため,各共同相続人は,遺産に属する預貯金債権のうち,相続開始時の債権額の3分の1に,当該共同相続人の相続分を乗じた額について,単独で権利行使ができるようになりました。(民法909条の2)
この額には上限があり,法務省令によって150万円となっています。
今まで金融機関は,後日の争いを恐れて,相続人単独の預貯金の払い戻しに応じていませんでしたが,相続法改正により,この制度が認められ,金融機関も従来の態度を改め,払い戻しに応ずるようになりました。
学費や生活費等を遺産で賄いたいという相続人は,この制度を利用するとよいと思います。