1.はじめに
公務員をしていた被相続人について,他の職業についていた被相続人の相続と,特に変わったことはないのですが,公務員は他の職業の方と比べ,比較的安定しており定年まで勤務している方も多く相続財産が何もないという方はまれです。
そこで,被相続人が公務員であった相続人の方々に対しどういった資産が相続財産になるのか遺産分割はどのようにしたらよいのかを解説したいと思います。
2.預貯金について
被相続人が公務員の場合,大半の方は多かれ少なかれ預貯金を有しています。
預貯金の存在につきましては,相続人であれば,どこの金融機関も取引のあるなし,ある場合の取引履歴を開示してくれますので,被相続人が取引をしたと推測される金融機関に開示を求めればよいでしょう。
3.土地,建物の不動産について
公務員は収入も安定しており,金融機関からの借入れは容易ですので居住用の不動産を有している場合が多いかと思います。
たまには居住用の不動産の他に利殖のためにそれ以外の不動産を所有していることもあります。
この場合,相続人は被相続人が居住している自治体に固定資産課税台帳(名寄帳)写しの交付を求め,調査することができます。
不動産の時価につきましては,自治体から固定資産評価証明書を取得したり,各地の税務署にあるその土地の路線価がいくらかを調べ,近くの不動産業者に簡易査定の作成を依頼すればある程度はわかります。
又国土交通省が公表している公示価格を参考にしてもよいと思います。
もっと正確にしたいということであれば不動産鑑定士に鑑定を依頼することも必要になるでしょう。
遺産分割にあたっては被相続人死亡時の不動産の時価を確定する必要がありますのでなるべく信頼できる時価を算定する必要があります。
4.退職金について
公務員は退職金を必ず受領できますので,これが預貯金の中に残っていたり,他の資産にかえられていたら何も問題はありませんが,はっきりしない場合には,しっかりとした調査をする必要があります。
公務員が在職中に死亡したことによって退職した場合にも死亡退職金が支払われます。
しかし,公務員の場合は,法令によって死亡退職金をどの相続人が受領するか定められていますので,遺産分割の対象とはならず,その遺族の固有の財産となります。
5.退職年金について
この年金は2か月毎の後払いになっていますので,被相続人である公務員が死亡した場合,この期間の年金を受領していない場合があります。
この場合,被相続人と生計を同一にしていた遺族は,未支給分の年金の請求をすることができます。
未支給分については,遺族固有の請求権ですので,遺産分割の対象にはなりません。
被相続人によって生計を維持されていた遺族は,遺族年金などを受給できますが,これはその遺族の固有の権利であり遺産分割の対象にはなりません。
6.財形貯蓄,共済年金について
財形貯蓄とは,勤労者財産形成促進法により,給与からの天引きで行う貯蓄の制度です。
財形貯蓄には一般財形貯蓄,財形年金貯蓄,財形住宅貯蓄の3種類があります。
又,公務員の場合には共済組合が運営している共済貯金という制度もあります。
公務員の場合はこれらの制度を利用している方も多いので,金融機関等で調査する必要があります。
7.生命保険について
被相続人の死亡によって発生する死亡保険金については受取人が指定されていればその人固有の権利ですので遺産分割の対象にはなりません。
既にその保険が満期をむかえていて,まだ被相続人が満期保険金を受領していない場合は,遺産ですので遺産分割の対象になります。
8.株式,投資信託について
公務員は比較的収入が安定しているため,株式や投資信託をしている方もいるのではないかと思います。
これらの取引をしている場合,証券会社から書類が自宅に届いている可能性があります。
これらを参考にしてどのような取引きをしていたのか調べることもできます。
又,取引先の証券会社がわからない場合でも,証券保管振替機構を調査すれば,被相続人がどこの証券会社に口座を開設しているかを調べることができます。
9.遺産分割協議,調停,審判について
こうした調査をした上で,まず相続人間で遺産分割の協議をすることになります。
話しあいにより協議がまとまらない場合,家庭裁判所に調停の申立てをし,そこでもまとまらない場合には審判に移行し,裁判官の判断で遺産の分割がなされることになります。
この手続は公務員と他の職業の方々との間で何ら変わることはありません。
10.まとめ
既に50年以上の歴史を有する当事務所は過去に公務員であった方々の遺産分割についても関与し解決してきました。
安心して当事務所にご相談いただけると幸いです。