1.はじめに
会社経営者の被相続人が死亡すると会社の経営をめぐる問題が発生します。
いわゆる相続・事業承継の問題ですがこの問題は相続が開始してからではなく,早めに考えておくことが相続が「争族」にならないための被相続人の最低限の対策ではないでしょうか。
2.会社株式の相続
会社経営者の被相続人が死亡しても,その子供である相続人が自動的に後継の経営者となれるものではありません。
ほとんどの場合,会社の経営を被相続人の子供の誰に承継させようと決まっていることと思いますが,その子供が会社の株式を相続できなければ,その子供が会社経営をすることは不可能になります。
会社株式の相続には難しい問題があり,通常の場合は未上場株式ですので,株式の価格がどうなるかが最も重要です。
非上場会社の株式の評価については,「類似業種比準方式」,「純資産価格方式」,「配当還元方式」の3種類の評価方法がありますが,会社経営者は自社の経理をみてくれる顧問税理士と相談の上,自社の株式がいくらになるのか常日頃から把握しておく必要があります。
会社経営者の資産が自社の株式で,他に預貯金等の金融資産がなく,特定の相続人である子供に株式を相続させたとすると,遺産分割にあたりその相続人は他の相続人に多額の代償金を支払わなければなりません。
その場合,株式の相続を誰にするかで,相続人間に争いが生じ会社経営者の被相続人が自分の後継者と決めた相続人である子供が会社を引き継ぐことができない場合があります。
3.公正証書遺言を残すことの重要性
会社経営者が自社の後継者を子供の内の誰と決めたとしたら,まず,公証役場の公証人にお願いして,公正証書遺言を作成することがベストです。
自筆による遺言だとすると,たとえ遺言としての形式が整っていたとしても,不平,不満のある子供が無効であると主張することが多々あるため,この事態を避けるために公正証書遺言にしておくことが重要です。
遺言書が存在しないと遺産としての株式を誰が取得するのかはっきりせず,被相続人死亡後の会社の経営が安定しません。
遺言書があれば被相続人の会社経営の後継者を誰にするかの意思が明白となり,他の相続人から異議が出される余地がなくなります。
又被相続人が会社の経営をする子供以外の子供に遺言書の中で遺留分を尊重した相続分の配慮をしていれば,遺留分の侵害はなく被相続人から後継者として指定された子供である相続人は遺留分侵害額相当のお金を支払う必要がありません。
4.会社経営者の会社債務の連帯保証
会社経営者が自社の会社の金融機関に対する負債について連帯保証をしている場合,相続人はその債務を相続することになりますので注意が必要です。
こうした場合,会社の後継者と指定された相続人が連帯保証債務を相続し,他の相続人が相続しないという解決策をとることもよくある事例です。
5.まとめ
当事務所は,既に50年以上の歴史を有しており,今まで数多くの会社経営者の方々の相続問題を解決してきました。
会社経営者の方々の相続につきましては,相続人間の感情のもつれ以外に会社経営をめぐる複雑な問題がからんできますので専門知識が必要になることが多いです。
当事務所は会社経営者の方々から相談される相続問題を取り扱っていますのでお気軽にご相談いただけると幸いです。