異母兄弟とは
1 異母兄弟とは,父親を同じくし,母親が異なる兄弟姉妹を意味します。
2 異母兄弟の相続に関しては,主に,父親が死亡した場合と異母兄弟が死亡した場合に相続の問題が起こります。
前妻が死亡した場合は後妻の子は法定相続人ではなく,後妻が死亡した場合は前妻の子は法定相続人ではないため,母親(前妻や後妻)の死亡した場合には異母兄弟(前妻の子や後妻の子)間で相続の問題は基本的には起こらないと考えられます。
父親が死亡した場合
1 父親が死亡した場合,配偶者である後妻の法定相続分は2分の1です。前妻はすでに離婚して配偶者ではないため,法定相続人ではありません。
2 子の法定相続分は2分の1ですが,子が数人あるときは各自の法定相続分は相等しいものとされています(民法900条4号本文)。例えば,父親と前妻との間に子が1人,父親と後妻との間に子が2人いる場合,子は各自6分の1ずつの法定相続分となります。
3 前妻の子だからといって,後妻の子より法定相続分が少なくなるというわけではありません。
ただし,父親が,遺言により後妻の子を優遇する場合はあり得るため,遺言内容によっては,前妻の子は遺留分侵害額請求をすることが考えられます。
異母兄弟が死亡した場合
前述した,父親と前妻との間に子が1人,父親と後妻との間に子が2人いる場合で説明します。前妻との子をA,後妻との子をB,Cとします。
1 Bに配偶者及び子がいる場合でBが死亡したら,配偶者及び子が法定相続人となるため,異母兄弟であるA,同母兄弟であるCは,Bを法定相続しません。
2 Bに子がなく,配偶者がおり,父親及び後妻が存命の場合,配偶者,直系尊属である父親及び後妻が,法定相続人となるため,異母兄弟であるA,同母兄弟であるCは,Bを法定相続しません。
3 Bに子がなく,配偶者がおり,父親及び後妻もすでに死亡している場合,配偶者,異母兄弟であるA,同母兄弟であるCは,Bを法定相続します。
4 Bに配偶者及び子がなく,父親及び後妻もすでに死亡している場合,異母兄弟であるA,同母兄弟であるCは,Bを法定相続します。
5 3と4の場合,同母兄弟と異母兄弟で扱いが異なるため注意が必要となります。
民法900条4号但し書きは,「父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は,父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする」と定めます。
3の場合,配偶者の法定相続分は4分の3,兄弟姉妹の法定相続分は4分の1です。民法900条4号但し書きにより,異母兄弟であるAの法定相続分は12分の1,同母兄弟であるCの法定相続分は6分の1となります。
4の場合,民法900条4号但し書きにより,異母兄弟であるAの法定相続分は3分の1,同母兄弟であるCの法定相続分は3分の2となります。
最後に
異母兄弟の相続の問題では,感情的軋轢があったり,長年音信不通であったり,そもそも異母兄弟の存在を把握していなかったというケースもあります。このような中で,当事者のみで異母兄弟の相続の問題を解決するのは困難といえるでしょう。
当事務所では,異母兄弟に関する遺産分割事件や遺留分侵害額請求事件を数多く扱っておりますので,気軽にご相談ください。