遺留分侵害額請求をされた場合に確認すべきポイント
遺留分侵害額請求を受けた相続人は、遺留分侵害額請求をした相続人に複雑な感情を有する方が大半です。
しかし、感情的になったら解決するケースも解決しない場合があります。
ここで冷静になって次の4点につきまして確認する必要があります。
(1) 本当に相手方は遺留分権利者であるか。
(2) 既に遺留分侵害額請求権は時効によって消滅していないか。
(3) 相手方の請求する遺留分侵害額は、果たして妥当な金額であったか。
(4) 相手方が特別受益にあたる生前贈与を受けているのではないか。
本当に相手方は遺留分権利者であるか。
遺留分はすべての相続人が主張できる権利ではありません。
被相続人の兄弟姉妹には遺留分は認められていません。
又、相続欠格者、被廃除者、相続放棄者のような相続権を失った人や包括受遺者にも遺留分は認められていません。
遺留分侵害額請求権に時効が成立していないか。
遺留分侵害額請求権には消滅時効の制度があり、「遺留分権利者が相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年」以内にその請求権を行使する必要があり、1年間経過してしまうと遺留分侵害額請求権は消滅します。
又、相続開始や遺留分侵害を知らなかった場合でも、相続開始から10年を経過しますと遺留分侵害額請求権は除斥期間により消滅します。
相手方の遺留分侵害額は妥当か。
相手方が請求してきた遺留分侵害額が妥当でない場合もあります。
預貯金や有価証券のように金銭に評価できる場合にはあまり問題はないのですが、不動産の評価は各人の見方によって異なり、相手方の評価額が高価な場合があります。
この場合、不動産業者の簡易査定や不動産鑑定士の鑑定評価を求めて相手方の評価額を検証する必要があります。
相手方の評価額が高額な場合は、上記の資料を示して減額を請求することができます。
相手方に特別受益がないか。
相手方が被相続人から特別受益にあたる生前贈与を受けていることがあります。
特別受益とはすべての遺贈のほか、婚姻・養子縁組のため又は生計の資本のための贈与をいいます。
単なる夫婦間の生活保持義務や親族間の扶養義務を超える特別な利益をいいます。
特別受益にあたる贈与があれば、その分を相続財産に加えて法定相続分を計算し、そこから上記の贈与の額を控除したものが具体的な相続分となります。
この相手方の特別受益を調査することによって、相手方の具体的な相続分を引き下げることができます。
寄与分は遺留分算定の基礎となる財産額に含まれるのか。
寄与分は遺留分の算定の基礎となる財産には含まれませんので、遺留分侵害額に何の影響も与えません。
遺留分侵害額を受けた方々の中には「自分には特別の貢献があるので遺留分侵害額を減らすことができる。」のではないかと考える者もいますが、このように考えることはできないとされています。
従がいまして、寄与分の主張を減額事由にすることはできません。
相手方からの請求を争う場合
相手方からの請求が過大であり、納得がいかない場合は多々あります。
この場合は争うことになります。
まずは、相手方と話しあい解決することがベターですが、お互いに感情的になるとなかなか解決しません。
話しあいによる解決が困難ならば、家庭裁判所による調停や訴訟で解決することになります。
調停は家庭裁判所の調停委員や裁判官の仲介により当事者双方が歩みより解決する手続です。
当事者双方は家庭裁判所から解決を強要されることはありませんが、時には調停委員や裁判官が評議した結果、解決案が示されることがあります。
これは決して不合理なものといえない場合が多く、受諾して調停を成立させた場合がベストの場合もあります。
調停が不成立の場合、簡易裁判所や地方裁判所での訴訟になりますが、原、被告双方の主張や証拠が出そろった上で裁判官が和解案を提示することが多いです。
この和解案で原、被告双方が受け入れれば訴訟上の和解が成立し、訴訟は終了します。
和解が成立しない場合には証人や原、被告本人の尋問を終了した後、判決が言い渡されます。
この判決に不服があれば、上級審に控訴することができます。
遺留分侵害額請求を受けたら適切に対応を。
遺留分侵害額請求の通知が届いても、これを無視する方もいらっしゃいます。
このように無視しますと話しあいによる解決は望めず調停や訴訟に移行してしまいます。
訴訟で判決になると年利3%の遅延損害金も認められ支払額が多額になる場合があります。
話しあいで解決することがベターですので、遺留分侵害額請求を受けた方は自分で対応できないのであれば、弁護士に依頼する方がベターだと思います。
遺留分侵害額請求をされた方々に対する当事務所の対応
当事務所は50年近くの歴史を有し、今までに数多くの遺留分減殺請求や遺留分侵害額請求の事件を取り扱っています。
勿論、遺留分侵害額請求をする方々からのご依頼だけではなく、遺留分侵害額請求をされた方々からのご依頼も数多く受任し解決してきました。
当事務所内にはこれらの事件の数多くの経験と知識があります。
当事務所ではいずれの側からのご依頼を受けた場合でも、まず、相手方との交渉による解決を目指します。
万一、話しあいによる解決ができなかった場合には、調停や訴訟でご依頼者様の主張が通りますよう力を尽くしています。
当事務所は遺留分侵害額請求をする側、される側を含めて、あらゆるケースに対応できますので、安心してご相談、ご依頼をいただけると幸いです。