旧民法の寄与分の制度は,相続人による特別の寄与が対象になっていました。
今回の相続法の改正では,被相続人に対して,無償で療養看護その他の労務を提供したことにより,被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をした相続人以外の親族の貢献を考慮する制度が新しく設けられました。(民法1050条)
これを,特別寄与者による特別寄与料の支払請求制度といいます。
日本では,妻が夫の両親の療養看護をすることが多かったのですが,妻は相続人ではなく,いくら療養看護を一生懸命やったとしても,被相続人(夫の両親)の死亡後の遺産分割協議において,自分の寄与分を主張することができなかったのです。
今回,民法1050条1項が,「被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族(相続人,相続の放棄をした者,民法891条の相続欠格者又は廃除によって相続権を失った者を除く。以下この条において「特別寄与者」という。)は,相続開始後,相続人に対し,特別寄与者の寄与に応じた額の金銭(以下この条において「特別寄与料」という。)の支払を請求することができる。」と規定し,特別寄与者の特別寄与料を認めました。
これにより,上記の立場にある妻も,被相続人の遺産から特別寄与料としての金銭を受け取ることができるようになりました。
この親族とは,6親等内の血族,配偶者,三親等内の姻族に限定され,それ以外の親族は,特別寄与料の請求をすることはできません。
当然,たとえ被相続人の療養看護に尽くしたとしても,被相続人と何らの身分関係のない者の特別寄与料の請求は認められません。
特別寄与者の請求権の期間には制限があり,特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から6か月を経過したとき,又は,相続の開始の時から1年を経過したときは,権利行使ができなくなります。
さらに,特別寄与料にも限度があり,被相続人が相続開始のときにおいて有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができないとされています。
これは,遺贈が,特別寄与者からの特別寄与料の請求に影響を受けないことにしたためです。
特別寄与料の負担者は相続人であり,相続人が複数いる場合は,法定相続分又は指定相続分に応じて負担することになっています。
特別寄与料の額は,まず,特別寄与者と相続人との話し合いにより決められますが,協議ができないときは,家庭裁判所に対し,協議に代わる処分の審判を請求し,家庭裁判所に決めてもらうことになります。
被相続人の療養看護に尽くした相続人以外の親族の皆様は,この制度を利用し,堂々と権利主張をしたらよろしいかと思います。