生前贈与を活用した相続対策についてお話しします!
相続人になる方に,あなたが生前贈与する場合,税務署に異議を述べられないように,次の3点について注意する必要があります。
1 あなたと相続人となる方との間で贈与契約書を作成し,贈与契約(「タダであげます。」「もらいます。」との合意)の存在を明白にしなければなりません。
贈与契約は口頭でも可能ですが,あとで税務署から否認された場合,証明することができなくなる場合もあります。
2 あなたが相続人となる方にお金をあげるとすると,あなたの銀行の預金からお金をおろし,それを相続人となる方の指定する銀行口座に振込んだ方がベストであると思います。
こうしておけば,誰の目から見ても,贈与がなされた事実が明白になり,税務署もそれを否認しないと思います。
3 あなたが,相続人になる方の預金通帳や印鑑を預かり,事実上管理していることになると,相続税の調査があった場合,税務所から贈与の事実が否認され,相続税が課されることがあります。
もらった財産の管理は,もらった人が行うことが原則です。
4 暦年贈与の活用について
贈与税は,相続税よりは税率が高いですが,暦年贈与を活用すればその短所を補うことができます。
暦年贈与は,その年の1月1日から12月31日の1年間の贈与を受けた財産の合計額が対象となります。
この暦年贈与によると,毎年合計110万円まで非課税となりますので,自分の財産を相続させたい方に,1人につき毎年110万円の範囲内であげれば,もらった方に贈与税がかからないことになります。
あなたにたくさんの預貯金があれば,この暦年贈与をして相続財産を減らし,相続税の支払いを少なくすることをお勧めします。
5 相続時精算課税制度の活用について
相続時精算課税制度とは,原則として60才以上の父母又は祖父母から,20才以上の子又は孫に対し,財産を贈与した場合に選択できる制度です。
この制度を利用したいと考えた場合,受贈者から,各地の税務署長に届出をしなければなりません。
この規定の適用を受けた贈与者から受贈者への贈与財産は,適用を受けた年以降はすべて相続税の課税財産に加算され,相続税の課税対象となります。
一度,この規定を受けると,後で撤回することができませんので注意する必要があります。
将来値上がりすると思われる財産の贈与や,高収益があがると予測されるマンション等の賃貸物件を贈与して,相続よりも早い段階で,相続人に賃料収入を渡してあげたいと考える場合には,この活用をすることが適しています。
相続時精算課税制度を選択した場合,贈与税の基礎控除はありませんが,複数年にわたって利用できる限度額2500万円の特別控除額があります。
課税対象額につきましては,暦年贈与の場合と同じく,贈与時の相続税評価額となり,これが相続財産として加算されることになります。
将来値下がりすると予測される不動産を贈与しますと,かえって納税額が上がってしまうこともありますのでご注意下さい。
相続時精算課税制度では,2500万円を超える贈与に対しては20パーセントの贈与税を納付することになります。
但し,相続税の申告時に,精算課税によって取得した財産を加算すると共に,20パーセントの贈与税は,納付すべき相続税から控除され,控除しきれなかった贈与税は還付されることになります。
暦年贈与の場合,相続開始前3年以内の贈与に限って,相続財産に加算され,相続税の対象となりますが,この場合でも,既に納付した贈与税があれば,相続税から控除されます。
この場合,納付すべき相続税を超える贈与税の納付があったとしても,贈与税は還付されませんので留意して下さい。
なお,相続開始前,3年以内の贈与が加算されるのは,その相続で財産を取得した人に限られます。
A相続人以外の人に対する贈与は,相続財産には加算されません。
6 配偶者に対する贈与の活用
婚姻期間が20年以上経過した配偶者から,居住用の土地・建物又は居住用の土地・建物を取得するためのお金を贈られた場合,それらの財産にかかる贈与税の課税価格から2000万円を控除することができます。
これを配偶者控除といいます。
この配偶者控除は,相続開始の年においても適用を受けることができますし,相続開始前3年以内の贈与財産の相続財産の加算の対象ともなりません。
この制度を活用すれば,相続税の納付を低く抑えることが可能となります。
以上,生前贈与を活用した相続対策についてお知らせしましたが,この他に,期間は2019年3月31日と限定されていますが,1500万円までの教育資金の一括贈与や,1000万円までの子や孫に対する結婚,子育ての資金の一括贈与の贈与税非課税制度がありますのでご活用下さい。
さらに,2021年12月31日までと限定されていますが,子や孫に対する住宅資金取付資金贈与の非課税税制制度もあります。
以上は,合法的に節税できる制度ですので,活用されたらよろしいかと考えます。